2022年6月10日
今回、2022国際ロボット展で実演した「変種変量・工程変化に対応する自律分散型ものづくり」を紹介します。当社は、i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス)※1コンセプトに基づいた製品を通じて、変種変量・工程変化といった未来の変化に対応できるサステナブルなものづくりの実現に取り組んでいます。この取組みの最新提案として、ものづくり現場の変化に対応する当社の自律分散型ものづくりの内容を紹介します。
なお、2022国際ロボット展に出展した当社のデモは以下URLより確認できます。
https://www.e-mechatronics.com/exh/archive/irex2022/
※1 i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス)とは
「新たな産業自動化革命の実現」に向け、これまでのソリューションにデジタルデータのマネージメントを加えた新たなソリューションコンセプト。
当社は、2017年よりものづくりの自動化にデータ活用を融合させた新しいソリューションコンセプト「i3-Mechatronics」を展開してきました。「自律分散型のものづくり」とは、このi3-Mechatronicsコンセプトに基づき開発された製品群により、今までの「作業やその手順が固定化されている集中制御するものづくり」から脱却し、「ロボットを始めとする現場の機器が、何の作業をし、どの手順で動けばものができるかを理解し、自律的に動くものづくり」です。
これにより、ものづくりの工程が固定化されず、作るモノの量や種類の変化にも対応できる、より一層フレキシブルなものづくりの自動化が可能になります。セル※2を統合的に制御するYRM-Xコントローラを基軸とした自律分散制御とセルのデジタルツイン※3を実現することにより、変種変量・工程変化に対応したフレキシブルな自動化を提案します。
※2 セルとは
複数の装置およびロボットからなる構成で、共通のワークを持つなど、データの関連性が存在するひとつながりの設備
※3 デジタルツインとは
生産ラインをバーチャル環境上に同じように再現し、何度もシミュレーションさせることでシステムセットアップの時間を短縮したり、遠隔で操作できるようにする技術
この自律分散型ものづくりには、次に示す3つのポイントがあります。
1.工程が固定化されない(工程変化対応)
従来の生産工程は、コンベアなどを使って、決められた作業の順番にモノが設備に流れていくことで製品が出来上がっていくものでした。しかし、これからは、自走する機器などを用いて作られるモノ自体(ワーク)も、必要な場所へと、必要な作業順序で、自律的に動いていくことで製品が出来上がっていく。そんなワーク搬送のフレキシビリティをも向上させた「生産工程自体が固定されないものづくり」が実現可能となりました。
これが、「自律分散型ものづくり」の1つ目のポイント、「工程変化への対応」です。
2.生産量の変化に対応(変量生産対応)
生産量の増減に合わせてロボットの台数編成を変えた生産計画に変更すると、その変更に対し、ロボットを始めとした機器も自律的に動きを変えて対応することができます。2022国際ロボット展では、実際に自走ロボット1台をセル間移動させ、セル内で作業するロボット台数を変え組立作業を行うことで、変量生産に対応する様子を実演しました。このように、生産する機器編成をハード的にもソフト的にもフレキシブルに変更可能となったことにより、変量生産に対応できます。
これが、「自律分散型のものづくり」の2つ目のポイント、「生産量の変化への対応」です。
3.生産品種の変化に対応(変種生産対応)
バーチャル環境上で生産ラインを構築してシミュレーションを行うYASKAWA Cell Simulator(仮称)において、どのロボットがどこで何をするのかといった作業内容を「タスク」という概念を用いて定義し、YRM-Xコントローラを通してロボットに伝えています。
これにより、例えば生産品種が変更になったとしても、この「タスク」を再分配することにより、ロボットは容易に変更を認識して対応することができます。品種の追加や高頻度な変更にも柔軟に対応できるのは、この仕組みのためです。
これが、「自律分散型のものづくり」の3つ目のポイント、「生産品種の変化への対応」です。
自律分散型のものづくりは、当社の3つのキープロダクトで実現しています。
1.YRM-Xコントローラ
YRM-Xコントローラは複数の装置およびロボットを1台で最適に制御できます。セル全体の状態を把握することで、生産品質や生産性を向上させるコントローラです。装置やロボットを同期制御しながら、同時にデータ収集を行いセル全体の稼働状況を把握することができるため、セル内の各機器が役割(タスク)に従って自律的に動作する「自律分散制御」を実現しています。
2.YASKAWA Cockpit
YASKAWA Cockpitは、自動化された生産現場において、YRM-Xコントローラを通じて同期された現場のデータを収集・蓄積し、必要に応じてそのデータを上位システム(例えば予知・分析モデル生成可能なAI学習機など)へ配信する役割を担います。同時に、YASKAWA Cockpitに蓄積したデータを用い、生産現場の稼働状態監視・診断、故障予知、機器の異常診断、品質不良検出などをリアルタイムで実行します。YRM-Xコントローラと連携することにより、解析した結果に基づき、セル内の機器の動きを変えることも可能です。
現場の出来事は現場で処理し、必要に応じて上位システムと連携して現場のデータを活用できる状態を作る。これが、YASKAWA Cockpitの役割です。
3.YASKAWA Cell Simulator(仮称)
YASKAWA Cell Simulator(仮称)は、バーチャル環境で現場の動作計画や現場のデータに基づきリアル環境の忠実な再現を行います。このバーチャル環境により、実機がなくてもエンジニアリング(機器のコンフィグレーション・プランニングなど)やシミュレーション(セル全体のタクトタイム検証・干渉チェック等)を行うことができます。
この3つのプロダクトの連携により、バーチャル環境で計画した動作をそのままリアル環境で実行し、そこで生まれた現場のデータを一元的に同期させ、再度バーチャル環境でより精度の高い動作を計画し現場へフィードバックする・・・この、データによるバーチャル環境とリアル環境が双方向に連携する『デジタルツイン』構造により、ものづくりのPDCAを回し、サステナブルなものづくり環境の構築に貢献します。
今回、当社が2022国際ロボット展で提案した「変種変量・工程変化に対応する自律分散型ものづくり」を紹介しました。当社は、今後も、i3-Mechatronicsコンセプトに基づいた製品を通じて、変種変量・工程変化といった、日々の、そして未来の変化に対応できるサステナブルなものづくりをご提案し続けます。
今後とも、進化する当社にご期待ください。