当社グループは2019年9月にTCFD※1提言への賛同を表明し、2020年9月には環境省のTCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業への参加をするなど様々な活動を進め、このたび、TCFD提言に基づく気候変動関連の情報を開示しました。今後も引き続き気候変動関連の情報開示を充実させ、よりいっそうの環境に配慮した事業活動を継続していくことにより、持続可能な社会の実現への貢献と企業価値の更なる向上を図ります。
当社はサステナビリティ方針※2に基づき、取締役会/経営会議において持続的に成長するための重要課題としてサステナビリティ課題・目標(マテリアリティ)の特定および解決に向けた施策を決定しています。また、サステナビリティ推進体制※3として、社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、関連部門の責任者に加え、アドバイザーとして社外取締役が出席し、グループ全体のサステナビリティ施策のモニタリングおよび展開加速を図っています。
気候変動への対応についても、重要課題についてはマテリアリティに位置付け、サステナビリティ委員会にてモニタリングを図るとともに、それ以外の施策を含む全体遂行については、社長が任命した環境推進統括者が運営する環境推進体制※4においてPDCAを管理しています。
なお、取締役(社外取締役および監査等委員である取締役を除く)の報酬内容においては、持続可能な企業活動の実現および社会課題への対応を目的に、当社製品を通じたCO2排出量削減目標達成度を評価に組み込んでいます。
※2 サステナビリティ方針:
https://www.yaskawa.co.jp/company/csr/group/policy
※3 サステナビリティ推進体制:
https://www.yaskawa.co.jp/company/csr/group/promotion
※4 環境推進体制:
https://www.yaskawa.co.jp/company/csr/env/management
当社の主要事業である、モーションコントロール、ロボット、システムエンジニアリングについて、気候変動が及ぼすリスクと機会について検討を行いました。リスクと機会は、政策や規制など気候変動対策や社会的要求の変化等によって生じる“移行”リスク・機会と、自然災害や気温の上昇などによって生じる“物理”リスクが考えられます。
これらのリスク・機会を抽出し、事業活動に与える影響を「大」「中」「小」の3段階で評価しています。
リスク /機会 |
移行 /物理 |
要因 | 影響 | 評価 |
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リスク | 移行 | 炭素価格 |
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大 |
各国の炭素排出政策 |
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大 | ||
省エネ、低炭素化 |
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大 | ||
リサイクル規制 |
|
小 | ||
低炭素技術の普及 |
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中 | ||
投資家、 顧客の行動変化 |
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小 | ||
物理 | 平均気温の上昇 |
|
中 | |
異常気象の激甚化 |
|
大 | ||
機会 | 移行 | 省エネ、低炭素化 |
|
大 |
投資家、 顧客の行動変化 |
|
小 |
抽出したリスクと機会について、影響度が中、大のものについて、2030年の社会を想定した2℃、4℃のシナリオ分析を行いました。
シナリオ分析に用いた主なシナリオ
・主に移行リスクを分析するために使用 IEA※5:SDS※6、STEPS※7
・主に物理的リスクを分析するために使用 IPCC※8:RCP2.6※9、RCP8.5※10
※5 国際エネルギー機関
※6 持続可能な開発シナリオ
※7 すでに公表済みの政策によるシナリオ
※8 気候変動に関する政府間パネル
※9 世界の平均気温が産業革命以前より2℃程度上昇するシナリオ
※10 世界の平均気温が産業革命以前より4℃前後上昇するシナリオ
その結果、4℃シナリオでは低炭素化は推進されず、異常気象の激甚化が想定され、これにより引き起こされる物理的リスクへの対応が最も重要と考えられます。
2℃シナリオでは、異常気象の激甚化へのある程度の対応も必要ですが、それ以上に材料・資源価格上昇への対応が重要となります。一方、低炭素化が推進されることで、FA機器・産業用インバータ・再エネ発電用機器およびそれを用いた企業の工場・設備の生産性向上・省エネ性能を高めるソリューションビジネスの需要が拡大することが機会となることが分かりました。
これら分析結果の財務計画への影響は、リスクによる当社の売上減少よりも、機会による売上増加の方が大きいことが分かりました。
また、この機会への対応としては、安川グループが長期経営計画「2025年ビジョン」で目指す、i3-Mechatronicsを軸とした工場の自動化/最適化の取り組み、および社会の持続的な発展に向けた新たなメカトロニクス応用領域への挑戦において、展開を進めてまいります。
当社グループは、 直接的あるいは間接的に当社グループの経営あるいは事業運営に支障をきたす可能性のあるリスクに迅速かつ的確に対処するため、社長が指名した危機管理委員長が運営する危機管理委員会を設置しています。これにより、全社的なリスクの評価、管理、対策立案とその実行を行っています。
気候変動に関連するリスクについても、当委員会において評価、管理を行い、また危機発生時には危機のレベルに応じた対策本部を設置し、適切な対応を実施します。
危機管理委員会の内容については、取締役会/経営会議およびサステナビリティ委員会においても情報共有が行われ、全社の危機管理について監督およびモニタリングを実施するとともに、リスク評価とマテリアリティ分析の整合性を図ることで、全社におけるリスク管理の強化を図っています。
当社は、全人類における社会課題である地球温暖化の抑制に向けて、2050年に当社グループのグローバルの事業活動に伴うCO2※11排出量(スコープ1※12+スコープ2 ※13)を実質ゼロ(カーボンニュートラル)とするとともに、そのマイルストーンとして2030年の同CO2排出量を2018年比で51%削減する目標「2050 CARBON NEUTRAL CHALLENGE」を設定しています。さらに、サプライチェーンの上流や下流のCO2排出量(スコープ3※14)に対しても2030年の同CO2排出量を2020年比で15%削減する目標を設定しています。
また、当社はコア技術であるパワー変換技術を活用した世界最高性能を誇るインバータなどの製品供給を通じ、世の中のCO2排出削減に貢献するため、2025年に当社製品によるCO2削減貢献量を当社グループによるCO2排出量の100倍以上とする目標「CCE100※15」を掲げて事業活動に取り組んでおります。
これらの目標の達成に向けて、当社では、インターナルカーボンプライシング制度(社内炭素価格:5,000円/t-CO2)を導入し、積極的な環境投資を進めております。
当社は、これら目標の設定や取組みを踏まえ、より一層の環境に配慮した事業活動を継続していくことにより、持続可能な社会の実現への貢献と企業価値の向上を図ります。
2050 CARBON NEUTRAL CHALLENGE と CCE100
スコープ1,スコープ2,スコープ3排出量(ESGデータ)
※11 二酸化炭素およびその他温室効果ガス(フロン等)を含む
※12 主に燃料使用に伴う排出(直接排出)
※13 購入した電力・熱の使用に伴う排出(電力会社等による間接排出)
※14 スコープ1、スコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
※15 Contribution to Cool Earth 100