安川ソリューションファクトリ

Vol.83 No.1 2018年の技術の成果

安川ソリューションファクトリ

概要

 入間事業所(埼玉県入間市)に整備を進めていた「安川ソリューションファクトリ」は2018年7月に竣工,12月に本格稼働した。工場のコンセプトは「ものづくりとビジネスを変える次世代工場」である。工場で生産するACサーボドライブ Σ-7シリーズの生産スピードと効率は従来の3倍を実現,リードタイムは1/6に短縮するなど飛躍的な生産性向上を達成した。

 それらを実現させたのは,半世紀以上にわたって培ってきた自動化技術,そして,当社が2017年に提唱したソリューションコンセプト i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス)の実践だと言える。このコンセプトを具現化したソリューションファクトリの取組みを順を追って述べる。

自動化徹底、物流に人手かからず

生産するACサーボドライブ Σ-7シリーズ

 まずは,徹底的な自動化について説明する。各工程の自動化は,モーションコントロール技術やロボットによって当社が提供してきた得意分野である。しかし,更なる自動化のポイントとなるのは,一つの工程を自動化するのにとどまらず,工程と工程を「つなぐ」ことである。各工程間を物理的につなぎ,データでもつなぐことが必須になる。

 製造工程を順に述べると,工場側からの要求で倉庫から必要な部品を出庫する。工場隣の建屋からコンベヤと垂直搬送機で運び,工場の1階(サーボモータ生産ライン)と2階(サーボアンプ生産ライン)に届く。

部品はAGVで組立て工程へと運ばれる

 部品は自動搬送車(AGV)に載り,それぞれの組立工程で規格標準化された「次世代組立ステーション」に自動で供給される。ステーションの中では,搬送装置とロボットが連携して自動で組立てを行う。工場内の物流の大部分は,AGVやコンベヤが担い,人手がかからない仕組みになっている。

視える化・データ活用

 次のポイントである「視える化」とデータ活用について述べる。受注,製造,出荷までの生産管理のデータをつなぐことは,徹底的な自動化実現のもう一つの柱である。製造現場はデータでつながり,設備や物流の状況を常にモニタリングしている。工場2階にある統合司令室では,工場の操業状況を一元的に監視している。これにより,生産計画の進捗や万が一のトラブルにも迅速に対応できる。

 製造現場にある数多くのコンポーネント同士をつなぐには,データ通信を共通化しなければならない。次世代組立ステーションではもちろん,基板実装工程で使用している複数のメーカの装置間でもデータが途切れては自動化が実現しない。各メーカの開示データから当社でシステムを開発し,データ通信を共通化した。生産計画では,これまでも導入していた製造実行システム(MES)に加え,その上位の生産計画もシステム側で実行し,高精度な生産計画を実現している。

YASKAWA Cockpitを適用,AI分析で故障予知

 コンセプト実践の要となるのがデジタルデータソリューションで,i3-Mechatronicsコンセプトの「知能化」を具現化した取組みとなる。これにはi3-Mechatronicsの中核を担うエッジソフトウェアツールYASKAWA Cockpitを適用した。これにより,データ収集から解析までを一括して行っている。製造現場のサーボ,インバータ,ロボットなどから収集した大量のデータを,AI分析やビッグデータ解析し,故障予知や設備の予防保全に活用している。

 例えば,2階のユニット組立工程では,ロボットの減速機の故障予知を行っている。減速機は摩耗して故障することがあるが,当社ではロボットの稼働データをYASKAWA Cockpitで収集し,AIが故障予知モデルを配信している。YASKAWA Cockpitはモデルを実行し,減速機ごとの摩耗の推移を予測する。故障日までの残日数は画面上で確認でき,故障する前に計画的にメンテナンスを実施することで,生産ラインの突発的な停止を防いでいる。

変種変量生産は新たな価値

工場では一気通貫で製品を生産

 ソリューションファクトリは整備計画段階から,多様な機種を一気通貫で生産することを目指した。各工程を切れ目なくつないだことで,サーボモータもサーボアンプも一気通貫生産を実現した。そして,変種変量生産こそ,最も製造現場で求められている価値だと位置付けている。

 入間事業所で生産しているモーションコントロール製品は,国内外の製造現場で使用される機器に組込まれる。製造業にとって機器は設備投資であり,当然ながら需要変動が起きる。1964年に開設した入間事業所でも,生産の閑散期とピーク期を繰返してきた。また,工業製品のサイクルスピードが上がっていることから,短納期で製品を求められることも多くなっている。工場新設するにあたり,需要の変動に強く,少量多品種に対応することこそが,ものづくりの潮流に即していると考えた。

組立工程などで多くのロボットが稼働

 変種変量生産を実現するための取組みとして,「段取りの自動切替え」を例に挙げる。サーボモータ生産ラインの本体組立工程では,流れてくる機種に応じてロボットが自動で治具を使い分ける段取りの自動切替えにより,台数が少なくても効率的に生産できる。

 容量やシャフト仕様の異なるサーボモータを同じラインで生産し,最小で1台から生産することにも対応可能となった。

 多くの製造現場が変種変量生産への対応を迫られており,ソリューションファクトリでの取組みは,製品を売るだけにとどまらずデジタルデータ活用によりものづくりの課題を総合的に解決する当社の新たなソリューションを示している。

生産改善のサイクル

 ソリューションファクトリでの実証結果は製品開発に随時,フィードバックしている。それによって製品の性能を向上させ,製品の進化は装置性能向上につながる。その装置を工場に適用することで,生産性が向上する「生産改善のサイクル」が生まれる。
 当社の製品とソリューションファクトリの進化は,顧客の高付加価値生産ライン構築に貢献する。


安川ソリューションファクトリの仕組みと取組みのイメージ

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