技術分野 | ドライブ技術 |
技術キーワード | データ活用,省エネ,創エネ,小型化,高効率化,予防保全,インバータ |
2024年4月23日
近年、ものづくりはサステナブルな社会の実現を目指し、大きく変化しています。製造業界では、生産現場の省エネが強く求められており、機械の高効率運転による電力消費量の削減が進んでいます。さらに、生産性向上に向け、IoT、ビッグデータ、AIなどの新しいテクノロジーが導入され、生産現場に革新的な変化がもたらされています。
当社は、省エネ機器による電力消費量の削減による省エネと高効率な創エネに取り組んでいます。さらに、自動化にデジタルデータ活用を加えたソリューションコンセプト「i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス)」を提唱し、生産性の向上、省エネ性向上と環境負荷低減によるカーボンニュートラルへの貢献を目指しています。
IIFES 2024では、サステナブルな社会実現のための取組みとして、省エネと環境負荷低減に寄与する展示を行いました。ここで、省エネや創エネを実現するグリーンプロダクツ、生産性向上を目指すi3-Mechatronics、および省力化を実現するデータ活用方法を紹介しました。
本レポートでは、これらの展示を通して、安川電機の目指すものづくりの姿と、それを実現する最新の製品ラインアップを紹介します。
IIFES 2024で安川電機が提案した、サステナブルな社会実現を目指す次世代ものづくりの核となるキーワードは、グリーンプロダクツによる省エネ・創エネ、i3-Mechatronicsによる生産性向上、そしてデータ活用による省力化です。
安川グループは、お客さまの生産性と省エネ性を飛躍的に向上させるとともに、環境負荷の低減を目指して、グリーンプロダクツ認定制度を導入しています。この制度では、業界最高水準の環境性能を持つ製品を「スーパーグリーンプロダクツ」として認定しており、例えば、エコPMモータ フラットタイプ、パワーコンディショナ Enewell-SOL P3A 25kW、YRM-Xコントローラなどが該当します。
詳細は、以下のウェブサイトでご覧いただけます。
https://www.e-mechatronics.com/green_product/index.html
今回は、これらの中からスーパーグリーンプロダクツに認定されたエコPMモータ フラットタイプとパワーコンディショナ Enewell-SOL P3Aについて紹介します。
図1 エコPMモータ フラットタイプ
近年、省エネルギーへの関心が高まる中、より効率のよい機器への需要が拡大しています。エコPMモータ フラットタイプ(図1)は、最高基準の効率レベルIE5を達成し、省エネニーズに寄与しています。このモータは、ユニークなフラット構造により、従来の高効率モータと比較して大幅な長さ短縮を実現し、機械の小型化に貢献します。さらに、安川インバータGA500と組み合わせて使用することで、軽負荷時の効率低下を最小限に抑えることが可能です。
図2 Enewell-SOL P3A 25kW
Enewell-SOL P3Aは、自家消費用途に特化した製品で、200V級では最大級の出力25kWを実現し、特に中規模自家消費型太陽光発電システムにおいてその優位性を発揮します。この製品は、既存の受電設備(変圧器)に容易に接続可能であり、自家消費に必要な独自の制御機能を内蔵しています。これにより、最小限の設備投資で高効率な太陽光発電の導入が可能です。
さらに、新たにゲートウェイ(Enewell Gateway)とクラウド(EneLeaf Cloud)の連携機能を備え、スマートフォンなどのスマートデバイスから遠隔操作やモニタリングが可能になりました。この進歩により、初期設定や試運転調整、運転および保守の効率化が実現できます。
この機能は、運用の柔軟性を高め、メンテナンスの手間を削減し、最終的にお客さまの利便性を向上させます。
図3 i3-Mechatronicsによる生産性向上
お客さまの生産性向上や省力化の課題を解決するi3-Mechatronicsは、当社が提案する自動化にデジタルデータ活用を加えたソリューションコンセプトです(図3)。このコンセプトを高精度に実現するためには、製造現場でデータ形式を統一し、高速に収集する必要があります。このため、当社インバータは通信オプションカード MPEカード※1を用いてMECHATROLINK-4を活用し、サーボとインバータで時間軸を一致させた同一のデータ形式による高速通信を可能とします。
これにより、より精度の高い制御が実現可能となり、収集されたデータはYASKAWA Cockpitに転送され、ここでの分析結果が機器の動きにフィードバックされることで、生産効率の向上と省力化に貢献します。
さらに、インバータGA700・GA500に内蔵しているDriveWorks EZ※2を活用することで、リモートI/O※3の組合せが可能となり、通信に対応していない周辺デバイスからもリアルタイムにデータを収集できます。
お客さまの省力化の課題をi3-Mechatronicsコンセプトにより解決する一例として、インバータを用いた異常予兆検知システムがあります。当社のインバータは、モータを制御すると同時に、モータを通じて機械の状態を常に監視(視える化)しており、微細な変化を迅速かつ正確に捉え、機械の状態を効果的に監視します。これにより、機械の異常を早期に検知し、故障の予防と稼働時間の最大化が可能になります。このシステムでは、異常状態のしきい値を設定することで、機械の正常な動作範囲と異常状態を区別し、早期の問題発見に寄与します。
図4 コンベヤシステムにおける
異常予兆検知システムのデモ概要
IIFES 2024では、コンベヤシステムにおけるモータの稼働データを利用した異常予兆検知システム(図4)を紹介しました。このシステムでは、トルク指令などのデータを事前に設定されたしきい値と比較することで、異常の兆候を検知します。収集されたデータは、SDカードに保存することができ、また、DriveWizard※4のデータログ機能を通じて記録できるため、異常が検知された際のインバータ状態を詳細に調査することが可能です。
この技術により、システムの効率的な監視と保守が実現できます。
図5 エコPMモータ フラットタイプのデモ概要
他にも、フラット構造による小型化と安川インバータGA500とを組み合わせることで可能となる大幅な電気料金削減(図5)を紹介しました。ここでも異常予兆検知を活用しており、GA500の先進的なプログラム機能DriveWorks EZを活用することで、ファン用途におけるフィルタの目詰まりによる風量低下をインバータがセンサーレスで自動的に検知し、風量を一定に保ちながら運転することができます。メンテナンスの手間と時間を大幅に削減し、運転効率の向上に貢献します。
このように、エコPMモータ フラットタイプは、省エネと運用効率の向上を実現する、技術的に優れたソリューションを提供します。
※1 MPEカード
多数のEthernet通信プロトコルに対応可能なインバータのオプション通信カード(Ethernetは、富士フイルムビジネスイノベーション株式会社の商標です)
※2 DriveWorksEZ
インバータ機能のカスタマイズを行う、ビジュアルプログラミングツール。U1000、GA700、GA500に組み込むことが可能。上位制御回路やインバータの入出力端子と組み合わせることで、外付けが必要なタイマーやリレーなどの周辺機器の削減でき、パソコンを使ってドラッグ&ドロップでインバータを簡単にカスタマイズ可能。
※3 リモートI/O
上位コントローラや様々な機器と接続してデータを入出力するためのツールであり、各種通信ネットワークに対応。
※4 DriveWizerd
当社インバータのパラメータ調整ソフト。
IIFES 2024で展示を通して、安川電機が目指すサステナブル社会な社会の実現を目指す次世代ものづくりの姿と、それを実現する最新の製品ラインアップを紹介しました。i3-Mechatronicsによるスマートなものづくりを実現するソリューションとして、エネルギー効率の高い生産が可能となるエコPMモータ フラットタイプやパワコンP3Aや、時間軸を一致させた高速通信ができるMECHATROLINK-4の活用を可能にするMPEカード、インバータを用いた異常予兆検知システムを紹介しました。
今後も、i3-Mechatronicsコンセプトを実現し、生産効率化・品質向上を推進するとともに、当社のグリーンプロダクツ製品などを用いて自動化を進めることで、サステナブルな社会の実現に貢献します。