北吉良平
技術開発本部 つくば研究所
2022年1月31日
本技術論文は,当社のマシンコントローラとサーボモータを用いて,波動歯車装置の位置決め制御性能を向上した結果を報告することを目的としている。波動歯車装置は小型で大トルクを出力可能な優れた減速機であるが,非線形摩擦をも有しており位置決め性能の劣化の一因となる。そこで,レオロジーモデルを用いて非線形摩擦の特性をモデル化し摩擦モデルを基に,フィードフォワード(FF)制御器と位置決め整定間際の急激なトルク指令の変化を抑制するためのトルク補償器の2つを設計することで,摩擦の影響を抑制し位置決め性能の向上を実現した。レオロジーモデルのパラメータの最適値の決定は知識と経験を要する作業であるが,ベイズ最適化を用いることで入出力の時系列データから自動的に決定している。2つの制御器を合わせて用いることで位置決め開始直後と整定間際における位置誤差を大幅に低減できることを,波動歯車装置を用いて実験的に示した。
なお,本稿は2021年度電気学会産業応用部門大会発表論文「非線形摩擦特性の同定結果に基づく高精度FF制御器・トルク補償器の設計と波動歯車装置への応用」を再編したものである。
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