Vol.84 No.1 2019年の技術の成果

巻頭言

小笠原 浩

代表取締役社長
小笠原 浩
Hiroshi Ogasawara

 2019年の当社を取巻く経済状況は,国内自動車向けや米国オイル・ガス関連など一部の市場が堅調に推移したものの,米中貿易摩擦の長期化を背景に半導体市場全般の投資先送り,自動車関連市場の減速などにより,グローバルで設備投資に対する慎重な姿勢が見られ,厳しい情勢が続きました。一方,技術開発面ではAI やIoT に代表される技術進化がFA 市場におけるビジネスのあり方に変革を迫るなど,グローバル経営環境の劇的な変化が常態化しています。

 このような状況下,当社は長期経営計画「2025年ビジョン」における基本方針を「コア事業の進化により,お客さまの経営課題の解決に寄与するとともに,メカトロニクス技術を応用した新規分野の拡大により,社会に新たな価値を生み出す」ことに定め,「i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス)を軸とした工場の自動化/最適化事業」,「社会の持続的な発展に向けた新たなメカトロニクス応用領域」をビジョンとして再定義し,2019年に「2025年ビジョン」の第2ステージとなる新中期経営計画「Challenge25」をスタートさせました。「Challenge25」では,「i3-Mechatronics によるビジネスモデル変革」,「拡大する“ロボティクス”ビジネスでの収益最大化」,「“選択と集中”によるリソース強化で新領域拡大」を取組みの基本方針と定めています。「i3-Mechatronics によるビジネスモデル変革」では,当社グループ独自のソリューションコンセプト「i3-Mechatronics」を柱としたビジネスモデルへの変革を更に加速させ,技術開発・生産・販売の各機能の強化を図ります。技術開発面では,「安川テクノロジーセンタ(仮称)」の新設によって機能の集約を図り,要素技術の開発から量産試作までの一貫した取組みを強化します。それにより「i3-Mechatronics」に基づき,顧客のニーズに応える技術・製品をタイムリーに開発・市場投入します。「拡大する“ロボティクス”ビジネスでの収益最大化」では「3C(Computer,Communication,Consumer)」を中心とした中国・アジア市場の進出を加速させます。また,当社グループが強みを持つ自動車関連市場においては完成車・部品メーカとの取組みを強化し,新たなソリューションやロボットを提供していきます。そして,今後大きな成長が見込まれる半導体製造装置市場では,製品ラインアップの強化と生産性向上を目指します。「“選択と集中”によるリソース強化で新領域拡大」では,当社グループのメカトロニクス技術の強みを生かせる応用分野(特に,省エネ,食品・農業,クリーンパワー)にリソースを集中し,新たな領域・市場を開拓します。

 2019年の個別の事業分野の技術開発については以下のとおりです。

 モーションコントロール事業では,新世代オープンフィールドネットワークMECHATROLINK-4を開発し,コントローラ・サーボドライブ製品への適用を進めました。また,汎用小型高機能インバータGA500を製品化し,インバータ新シリーズのラインアップを拡充しました。ロボット事業では,「i3-Mechatronics」実現のため,データマネジメントシステムYASKAWA Cockpit を更に進化させるとともに,各種アプリケーションも開発しました。システムエンジニアリング事業では,AI を活用した下水処理運転管理支援技術の研究を進め,クリーンパワー事業では,太陽光発電用パワーコンディショナXGI1500を製品化しました。研究開発でも,「i3-Mechatronics」の実現に向けて,ロボットコントローラ,環境ビジョンシステム,AI を活用したセンサレス技術などの開発に取組んでいます。

 当社は,基礎研究から量産試作までの一貫した研究開発体制を構築するため,「安川テクノロジーセンタ(仮称)」の開設(2020年度完成予定)を進めています。今までのように「サーボ」,「インバータ」,「ロボット」など個別技術の枠で世界一を目指すだけでなく,それぞれの技術のつながりにデータの活用を深め,当社グループの技術力を集約することで,顧客にデータを活用した課題解決手法を提案していきます。更に,産学連携を中心としたオープンイノベーションを推進し,農業,物流,医療・福祉などの新たな貢献分野を広げていきます。今後とも新たな事業領域に挑戦し続ける当社のソリューションにご期待ください。

[モーションコントロール事業] インバータ製品の拡充

 近年の産業界を取巻く環境は,モータのトップランナー規制に代表されるグローバルなエネルギー効率規制の強化,インダストリ4.0を始めとするIoTを利用した生産性向上への関心の高まりなど大きく変化している。
 このような変化する顧客ニーズに対応するため,機械の性能を最大限に発揮できる小型で高性能な製品や用途別の製品開発に取組んでいる。

(1)一般産業機械や設備などの幅広い用途に向けた世界最小クラスで高性能な汎用小型高機能インバータGA500を製品化した。革新的なPM モータ制御を搭載し,省エネに貢献するとともに,止まらない機械・設備を実現する「故障予兆診断」でIoT への対応や生産効率化に貢献できる。

(2)HVAC 市場向けには,電源環境に調和した性能を強化したインバータHV600を製品化した。HV600は,EMCフィルタ,DC リアクトルを全容量帯で標準内蔵しており,電源高調波に対応している。また,雰囲気環境性能として保護等級IP55にも対応している。

汎用小型高機能インバータ GA500 HVAC 用途向けインバータ HV600

[モーションコントロール事業] 主な広報・展示会

IIFES2019 当社ブースと展示の様子

IIFES2019 当社ブースと展示の様子

(1)IIFES2019(Innovative Industry Fair for E x E Solutions,2019年11月27~29日,東京ビッグサイト)では,「進化したi3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス)が製造現場の課題を解決します」をテーマに,i3-Mechatronics のデモンストレーション,省エネルギーエリアなど5つのエリアでサーボやインバータを紹介した。特にi3-Mechatronics のデモンストレーションでは新しいコンセプトのコントローラとYCP (注) の連携を披露した。その連携により,セル全体で時間軸の合ったデータを一元管理及び視える化するだけでなく,蓄積されたデータを基にリアルタイムでセルへの最適制御をフィードバックするデモは,来場者の注目を集めた。

(注) YCP:YASKAWA Cockpit の略(当社が開発したデジタルデータマネジメントシステムのソフトウェアプラットフォーム)

FOOMA JAPAN 2019 当社ブース

FOOMA JAPAN 2019 当社ブース

(2)FOOMA JAPAN2019(2019国際食品工業展,2019年7月9~12日,東京ビッグサイト)では,「『食』を大変革-ロボットが営む食と農-」をテーマに,i3-Mechatronics ユースケース(マシンコントローラMP3000シリーズ&AC サーボドライブΣ-7シリーズ,及びインバータによる故障予兆診断)を紹介し,多くの来場者の関心を集めた。

スマート工場EXPO 当社ブース

スマート工場EXPO 当社ブース

(3)スマート工場EXPO(2019年1月16~18日,東京ビッグサイト)では,「スマートファクトリを実現するi3-Mechatronics」をテーマに安川ソリューションファクトリでの実例を中心に
i3-Mechatronics の適用事例と運用効果を紹介し,好評を得た。

[ロボット事業] 市場の変化と当社の取組み

 米中貿易摩擦やブレグジットなどの影響で低迷している国際貿易により,国内外ともに製造業の設備投資が見送られている。これらを背景に産業用ロボット市場の不透明感が見られる一方で,労働力人口の減少と需要の多様化による自動化ニーズの増大と,AI や IoT などの技術進歩により,機器のデジタル化の利点を求めてロボットへの期待は今まで以上に大きくなりつつある。

 これらのニーズに応えるため,当社はソリューション提案力の強化に向けて,オール安川コンポーネントソリューションによるバーチャルとリアルを連携したデジタルデータソリューションコンセプト「i3-Mechatronics」を提案している。そして,ラインアップの拡充に注力するとともに,更に,セル内のロボットや機器を統合制御し,その全てのデータを同期させる中核的なシステムとなる「YRM コントローラ(仮称)」の開発を加速している。

 そのほか,中国・アジアの3C(Computer,Communication,Consumer)市場,グローバルの自動車(完成車・部品)市場や半導体製造装置市場で拡大する自動化のニーズに応えるために開発力・生産力を強化し,新製品の投入を加速している。

i3-Mechatronics による生産システムの進化~YRM コントローラ(仮称)

i3-Mechatronics による生産システムの進化
~YRM コントローラ(仮称)

[ロボット事業] 開発力・生産力強化

 開発力では,ロボットメーカとしての市場競争力を高めるため,グローバル(日,中,欧,米など)で技術開発力を強化し,ロボットの自律化に向けた要素技術開発を加速している。また,デジタルデータマネジメントの領域ではYRM コントローラ(仮称)に加え,現場のデータを蓄積・分析し,生産現 場の知能化を実現するYCP の進化やセルのエンジニアリングツールであるセルシミュレータなどの開発を進めるとともにAI ソリューションの実用化に向けた実証開発を加速している。

 生産力では,福岡県(北九州市・中間市)と中国江蘇省(常州市)にある生産工場に加え,欧州における今後のロボットの需要増に対応するため,スロベニアのコチェービェ市に新たな生産拠点(YASKAWA Europe Robotics d.o.o.)を新設した。日本・中国・欧州の3拠点での最適地生産による相乗効果を図り,今後の需要増及び市場変化に対応できるグローバルな生産体制 を確立した。

YASKAWA Europe Robotics d.o.o.

YASKAWA Europe Robotics d.o.o.

[ロボット事業] 新製品の投入

 新市場開拓のため,新製品を順次に市場投入している。ハンドリング用途では,幅広い分野の自動化に貢献する耐環境性を向上させた多用途適応型MOTOMAN-GP20HLや小型4軸スカラロボットMOTOMAN-SG400,-SG650を製品化した。人協働分野では耐環境性・可搬質量を向上させたMOTOMAN-HC10DT,-HC20DT(防じん・防滴仕様)とMOTOMAN-HC10DTF(食品仕様)を製品化することで適用範囲を拡大した。また,i3-Mechatronics の実現に向けてデジタルデータを活用するYCP の分析,モニタリング,プランニング機能の開発に取組んだ。

MOTOMAN-GP20HL,MOTOMAN-HC10DT, -HC20DT(防じん・防滴仕様),MOTOMAN-HC10DTF(食品仕様)

[ロボット事業] 展示会

2019国際ロボット展 当社ブース

2019国際ロボット展 当社ブース

 2019国際ロボット展(2019年12月18~21日,東京ビッグサイト)では,「i3-Mechatronics の進化によるスマートなモノづくりの実現」をテーマに掲げ,デジタルデータマネジメント(ビッグデータ・AI)及び,人協働ロボットを始めとしたロボット・サーボ・モーションコントロールなどの「オール安川」のコンポーネントによるソリューションを出展した。具現化したデモンストレーションとしてバーチャルとリアルを連携させたデジタルデータソリューションで,状況の変化に応じた最適なモノづくりを実現するデモを展示した。

[システムエンジニアリング事業] 鉄鋼・産業システム

 システム電気品の市場動向は製造業各社の設備投資に大きく左右される。ここ数年,中国経済にけん引され比較的安定した状況ではあったが,中国景気の減速が鮮明となり,少し先行きが見え辛い状況となりつつある。

 一方,業界再編が加速している国内鉄鋼業では,原材料である鉄鉱石の価格高騰が続き,更に,自然災害や設備火災による操業停止など受難の年であった。

 このような経営環境の中ではあるが,安心・安全,環境負荷改善,生産効率向上,働き方改革などをキーワードとした投資は計画どおり実行されている。当社は鉄鋼システムの大型の新設プロジェクトを始め,多くの老朽化更新,機能向上更新プロジェクトに取組んだ。

 インダストリ4.0,IoT,AI のブームも落ち着いてきており,実際の装置やプロセスへの実用化の局面になったと考えている。更に,高速通信規格5G の実用化が産業分野に応用されることで,あらゆる情報の見える化が加速され,生産性向上へ寄与することを期待している。

[システムエンジニアリング事業] 社会システム

 2019年度の下水道関連予算は2018年度並みとなり,電気設備発注ボリュームも2018年度と同規模であると予想された。一方,従事する職員の減少,高齢化に伴い,下水処理運営の監理技術者不足は深刻であり,技術者確保(育成)が課題となってきている。また,昨今の大規模自然災害に対する政府の「国土強靭化計画」により,官民連携による防災・減災への動きが本格化している。

 このような市場状況に対し,当社はベテラン職員のノウハウを継承しオペレータ支援を実現するAI を活用した下水処理運転管理支援技術研究や,より使いやすく信頼性の高い新しいシステムの顧客提供に取組んだ。

A 処理場1系曝気風量予測結果例

A 処理場1系曝気風量予測結果例

[システムエンジニアリング事業] 環境エネルギー

太陽光発電用パワーコンディショナ XGI1500

太陽光発電用パワーコンディショナ
XGI1500

 世界中の再生可能エネルギーの発電能力は,今後5年間で50%拡大すると予想されている。

 風力発電市場では,欧州を中心に洋上風車の導入が拡大している。10MW 超の大容量機種開発競争が加速し,アジア市場でも洋上風力計画が加速,拡大している。また,洋上風車建設に対応するSEP 船(Self-Elevating Platform:自己昇降式作業船)の建造計画も進んでいる。

 太陽光発電市場では,米国は民間企業による電力購入契約型(PPA 型:Power Purchase Agreement)の導入が拡大している。国内は住宅向け第三者所有型(TPO型:Third Party Ownership)の導入が加速するとともに,PPA 型採用も活発化している。また,災害時活用を含めた自家消費型,地域消費型採用拡大の動きも本格化している。

 このような市場の変化に対し,当社は需要地(欧州,米国)事業拠点を中心にグローバル展開の加速に取組んだ。

[研究開発] ロボット産業マッチングフェア北九州2019に出展

ロボット産業マッチングフェア北九州2019 当社ブース

ロボット産業マッチングフェア北九州2019
当社ブース

ロボット産業マッチングフェア北九州2019 小型高トルクアクチュエータ(デモ機)

ロボット産業マッチングフェア北九州2019
小型高トルクアクチュエータ(デモ機)

 ロボット産業マッチングフェア北九州2019(2019年6月19~21日,西日本総合展示場)に,医療福祉機器向け小型高トルクアクチュエータを出展した。

 小型高トルクアクチュエータはJAXA(宇宙航空研究開発機構)との共同研究で開発したもので,軽量・扁平形状(質量894g,厚み38.4mm)で 110N・m 以上の高トルクを出力できる。軽量・扁平化を実現するため,スロットレスの小型DC モータを新規開発した。また,高トルク化実現のため,遊星ギヤとハイポイドギヤを組合せて高減速比化し,これらを2個の小型DC モータで駆動する機構とした。

 小型高トルクアクチュエータは,軽量で扁平な形状と高トルク出力であることから,医療・福祉向けのアシスト機器に最適である。マッチングフェアではアシスト機器を模擬したデモ機を展示し,3日間で400名以上の見学者から感想や意見を得た。

[研究開発] 2019年度九州地方発明表彰

九州地方発明表彰

九州地方発明表彰

バッテリ不要のモータ用エンコーダ

バッテリ不要のモータ用エンコーダ

 2019年11月8日に九州地方発明表彰式が開催され,「バッテリ不要のモータ用エンコーダ(特許)」が福岡県知事賞を受賞した。

 本発明は,電源OFF 時にバッテリが無くても,モータシャフトの多回転量を検出するバッテリレスエンコーダに関わるものである。シャフト側に配置した磁石により発生する磁束密度の切替わりを,長手方向を磁化容易方向とする特殊な磁気センサで誘起電圧として取出す。これにより,電源OFFの状態でもモータシャフトの多回転量をカウントし,保持するものである。本発明の特長は,磁気回路をシャフト側に配置した磁石の磁化方向と磁性体の磁化容易方向をシャフトの回転中心線に直交する面に沿った方向とすることにより,薄型化を達成したことにある。

 本発明によるバッテリ不要のエンコーダ搭載モータは,当社製品である AC サーボモータΣ-7のオプション仕様として販売されており,顧客に好評を博している。

[研究開発] 電気学会メカトロニクス制御技術委員会より優秀論文賞を受賞

メカトロニクス制御技術委員会表彰

メカトロニクス制御技術委員会表彰

 2020年1月10日に電気学会メカトロニクス制御技術委員会表彰式が開催され,論文「カスケード型位置制御系の次数とパラメータの同時最適化」が優秀論文賞を受賞した。

 本技術は,ユーザが指定した要求仕様とモータの先に付いている機械の特性に合せて,サーボドライバに実装されているソフトウェアにおいて,位置制御器の構成とパラメータを自動調整する技術である。Σ-7のメカニカルアナリシス機能と連携することで,生産ライン稼働前の調整作業を自動化し,ユーザにEasy-to-Use な製品を提供することを目的とした研究である。

 なお,本研究は東京大学の堀・藤本研究室との共同研究の成果である。

[技術論文] 汎用小型高機能インバータGA500

 現在の産業界は,モータの消費電力を抑制するための高効率規制(トップランナー規制など)や,インダストリ4.0を始めとするIoT を利用した生産性向上への関心の高まりなど大きく変化している中,顧客が抱える課題やニーズはアプリケーションごとで多岐にわたっている。

 これらのニーズに応えるため,「多才」「使いやすさ」「安心」をコンセプトに従来のインバータシリーズを刷新し,一般産業用機械や設備用途に最適な産業用汎用製品,地域・市場ごとに最適なアプリケーション別製品による付加価値を提供するため,一般産業用途向け高性能インバータGA700,クレーン専用インバータCR700に続く,新シリーズ第三弾として汎用小型高機能インバータGA500を製品化した。GA500は一般産業用途向け小型ベクトル制御インバータV1000の後継機種である。

 本稿ではGA500の開発の背景,コンセプト,特長及び仕様について述べている。

汎用小型高機能インバータGA500

[技術論文] i3-Mechatronics を具現化するデジタルデータマネジメントシステム ~YASKAWA Cockpit とアドオンアプリケーションの開発~

 当社は,i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス)というソリューションコンセプトの具現化に向け,YASKAWA Cockpit(以下,YCP)と呼ぶデータマネジメントシステムを開発した。YCP に接続された機器からアドオンアプリケーションとして実行されるデータ収集アプリを通じて,必要なデータが収集されデータベースに蓄積される。このデータベースアクセスのインターフェースとしてWebAPI を提供されたユーザは,このWebAPI を活用して固有のニーズに合致するアプリケーションソフトウェアを独自に製作することができる。YCP では,製造現場で汎用的に活用可能なアドオンアプリケーションをあらかじめ準備している。また,当社製品に接続してデータ収集するためのアドオンアプリケーション以外に,他社のPLC や工作機械に接続してデータ収集するためのアドオンアプリケーションも提供する。

 本稿では,YCP の特長とアドオンアプリケーションの機能について述べている。

i3-Mechatronics を具現化するデジタルデータマネジメントシステム

[技術論文] AI を活用した制御トルクによる研削状態の推定

 製造分野での生産性を更に高めるには,今後産業用ロボットの自律性が重要な要素になってくる。加工作業や組立作業においても,その作業対象の状態に合せた適切な動作を自律的に実行することが求められる。状況を判断するためにはロボットにセンサを搭載するのが主流であるが,センサ故障の懸念やコスト高などの課題がある。そこで,ロボットの各軸の稼働データだけを用いてセンサレスで作業状態を推定する方法を考える。この方法では,ロボットが作業した際の制御トルクデータを収集し,推定作業トルクデータとの差分を入力にして,作業状態を推定するモデルを機械学習によって生成する。これにより,センサを取付けることなく作業対象の状態に応じて,適切な動作を自律的に行えることが期待できる。

 今回,溶接ビードの研削作業に対してセンサレスでの作業状態推定手法を適用した。本稿では,その概要,評価結果,及び今後の展望について述べている。

AI を活用した制御トルクによる研削状態の推定

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