技術2017年6月19日
株式会社安川電機(代表取締役社長 小笠原 浩)は、研磨などの熟練を要する複雑な接触作業の ロボット化を促進するために、人がお手本を示す(実演する)ことでロボットに動きを直感的に教える「実演教示機能」を開発しました。
当社は長期経営計画「2025年ビジョン」でメカトロニクス技術とICT技術の融合に取り組み、新しい自動化のソリューションを提供することを掲げています。近年、先進国の少子高齢化による労働力不足、新興国の物価・賃金の上昇によるコスト増加が課題となっており、より一層の産業用ロボットの導入が期待されています。ところが、産業用ロボットには「教示」と呼ばれるロボットに動作を教える作業がユーザーにとって大きな負担になることがあり、導入障壁の一つになっていました。本機能により、教示に関するユーザーの負担を軽減するとともに、ロボットシステムの立上げ時間の大幅な短縮が可能となります。
実演教示機能の適用は、研磨や組立などの複雑な接触作業を見込んでおり、今後は実作業で検証しながら作業品質や使い勝手の向上を目指します。なお、この実演教示機能は、2017年6月21日(水)~23日(金)に開催されるロボット産業マッチングフェア北九州(会場:北九州総合展示場)に参考出品いたします。
実演教示機能のイメージ(研磨作業の教示)
日本の金属加工メーカーの熟練作業者は、非常に高いスキルを有しているといわれていますが、少子高齢化による後継者不足が課題となっています。また、新興国においても、3K作業による若者の工場勤務離れ、スキル習得に長期間を有することや人件費高騰などの理由から労働力の確保が難しくなってきており、世界中でロボット化のニーズが高まっています。
産業用ロボットでは、プログラミングペンダントと呼ばれる装置を使ってロボットに動作を教示するのが一般的ですが、ペンダント操作に不慣れな作業者は教示に時間がかかるとともに、力加減は教えることができません。そのため、研磨など熟練を要する複雑な接触作業をプログラミングペンダントで教示するのは非常に難しく、ロボット化が進んでいないのが現状です。また、たとえ現場の作業者が時間をかけて1品種の研磨動作を教示できたとしても、研磨するワークの形状は様々で、多品種に対応するのは極めて困難です。
実演教示機能は、作業者がペンダントを使ってロボットを操作して教示するのではなく、お手本を示すだけでロボットが忠実に再現することができます。熟練作業のロボット化をサポートするとともに、多品種対応時のシステム立上げ時間短縮に貢献します。
(1)人のお手本(実演)による簡単教示
人が作業を実演している最中の手先の位置姿勢や力をセンサで計測し、その計測データをロボットの動作に自動変換することで動作を教示します。ペンダント操作に不慣れでも、実演による教示であれば、研磨のようなワークの曲面形状に合わせた3次元的な軌道と力加減を短時間で簡単に教示することができます。また、短時間で教示ができるため、多品種対応が容易になります。
(2)学習機能による熟練作業者のスキルの再現
現状のロボットは位置姿勢を再現することは得意ですが、力加減を再現することは得意ではありません。人が練習を繰り返すことで上達するのと同様に、ロボットが自ら練習を繰り返す(学習する)ことで、教示した熟練作業者の力加減(スキル)を再現できます。また、生産ラインのレイアウト変更によりロボットと研磨機の配置が変わったとしても、再学習することで実演時のスキルを簡単に再現できるため、短時間でラインを再稼働させることができます。教示データは再利用性が高く、異なるロボットで共有することも可能です。
金属ワーク(自動車部品、水栓金具、時計など)の研磨やバリ取り、組立作業
【お問合せ先】
株式会社安川電機
広報・IR部長
林田 歩
TEL: 03-5402-4564