2022年3月7日
サーボモータは、電磁力およびステータやロータといった構造部の振動モード(どのように振動しているかを示す振動の形状)などの要因により、振動や騒音が発生します。これらは、サーボモータを用いた装置の生産品質や装置が設置される生産現場の環境に悪影響を与えます。そのためサーボモータの振動・騒音の低減が求められます。したがって、設計段階で振動・騒音を予測する解析技術が重要となります。
サーボモータの振動は共振によって増大します。共振は、加振力(構造物に振動を起こさせる力)と構造部の振動モードの周波数が一致すると発生します。
設計段階でこのような現象を予測するには、設計したサーボモータの3Dモデルを用いて、構造解析や音響解析といったシミュレーションによって振動や音を確認します。これらの解析で精度よく振動・騒音を予測するためには、加振力と振動モードの振動要因が組み合わさって起こる共振現象を再現できる、非常にレベルの高い解析技術が求められます。
まず、どのような振動モードで共振が起こるのかを調べるため、当社サーボモータを用いて、ステータの振動モードおよび稼働時の振動・音を測定しました。
ハンマリング試験では、サーボモータをハンマーでたたいて加振力を与え、ステータの振動モードとその周波数を確認しました。
ステータは円環2次、3次、4次に変形する振動モードを有し、これらの振動モードで共振を起こす可能性があります。
また、実稼働試験では、サーボモータを駆動した時の振動および音を測定し、この測定したデータを分析し各周波数成分の振動・音を確認しました。分析した結果から、ステータが変形する円環2次モードと加振力が共振し、振動・音が増大することが分かります。
したがって、サーボモータの振動・騒音を低減するためには、ステータの円環2次モードと共振する振動・音を予測する解析技術が必要となります。
ステータの振動・騒音を精度よく予測するため、電磁界・構造・振動・音響解析を連成した解析技術を構築しました。以下は解析フローです。
電磁界・構造・振動・音響連成解析のポイントは3つあります。
振動・音を測定したモータに連成解析を適用し、実測と解析の振動および音を比較し、連成解析の効果を確認しました。
■振動モードと周波数
ステータの円環2次モードの振動モードを確認することができ、この共振周波数は誤差1%と高精度で予測できました。
対象のモータはフレームとコアが焼きバメで締結されており、この加工によって発生する応力を静的構造解析を用いて算出し、実機の状態を解析上で再現することで、精度よい結果を得ることができました。
■振動と音
円環2次モードの振動および音圧の最大値は誤差5%以下で予測することができ、円環2次モードでの共振現象を捉えることができています。振動モードを正確に予測でき、電磁界解析で算出した加振力を用いることができる電磁界・構造・振動・音響連成解析によって、実機の共振現象を再現でき、精度よく振動と音を予測できることが分かります。
以上の結果から、構築した連成解析技術によって、これまで技術的に正確な予測が困難であった加振力と振動モード、これらの振動要因が組み合わさる共振現象の予測が可能となりました。
解析では精度を向上するため、解析条件や材料物性値などを調整します。モータの機種が変わると構造や使用する部品が変わり、調整した解析条件が対応しなくなり、解析精度が低下することが課題として挙げられます。
構築した解析技術の汎用性を確認するため、容量や構造が異なるサーボモータ4機種の振動モードの実測・解析を実施しました。おおむね固有振動数の解析誤差は10%以下と精度よい結果が得られました。機種Cの円環2次モードは誤差がやや大きい結果が得られています。この誤差要因は、調整した材料物性値であり、この調整が課題であると考えています。
また、振動・騒音が問題になりやすい数kHzの円環3次モードについてもよい精度を得られていることが分かります。
構築した解析技術は精度よく振動・騒音を予測できることに加えて、汎用性も有しており、サーボモータの設計に幅広く活用しています。
電磁界・構造・振動・音響連成解析を設計に活用することで、ステータの振動モードや振動・騒音を精度よく予測することができました。モータの振動・騒音はステータ以外にロータからも発生することから、連成解析技術をロータの振動・騒音の予測に展開していきます。また、ステータの解析技術は課題を解決する取組みを継続し、設計技術を更に向上させます。