テクニカルレポート 2021 No.2
生産現場の課題解決に寄与~ACサーボドライブ Σ-Xシリーズ

2021年11月5日

ACサーボドライブΣ-X(シグマ テン)シリーズ誕生

当社は1992年に業界に先駆けてオールデジタルサーボ「ACサーボドライブ“Σシリーズ”」を製品化し、高性能、高機能、小型化によって、多くのお客さまからご好評を頂いております。
Σシリーズは、1997年に“Σ-Ⅱシリーズ”、2002年に“Σ-Ⅲシリーズ”、2007年に“Σ-Vシリーズ”、そして2013年に“Σ-7シリーズ”とお客さまのニーズの変化に合わせて進化してきました。

Σ-Xシリーズ

近年、SDGsをはじめとした国際社会が取り組むべき社会的な課題や、経営層が抱える課題がある中、製造業に対しても企業変革が求められます。そのような様々な課題を解決するために、当社はi3-Mechatronicsのソリューションコンセプトに取り組んでいます。
こうした背景をうけ、2021年3月、Σ-7シリーズの後継機種として、更なるモーション性能向上に加え、センシングデータ活用の機能を付加した“Σ-Xシリーズ”を製品化しました。装置の動きの変化(問題)には原因がある。その真因を追究するには各機能がどのような状態であったかが分かる(時間軸のそろった質の高い)データを収集する必要がある。それを可能にするのがΣ-Xです。

ACサーボドライブ Σ-Xシリーズの特長

Σ-Xシリーズは「サーボから始めるデジタルデータソリューション」と「業界最高のモーション性能」を特長としています。各々の特長の一部を紹介します。

特長1 サーボから始めるデジタルデータソリューション

■データ収集

データ収集

装置の予防保全や生産品質向上のためには装置から様々なデータを取ることが重要となります。Σ-7から強化されたデータ検出機能によりサーボがセンサーとなり、装置内の様々なデータを検出できるようになりました。さらにΣ-LINKⅡ※1につなぐことで外部センサーとも接続でき、それらのデータを基に装置の変化や異常を検出できます。

※1 Σ-LINKⅡ とは
サーボと各種センサーの情報を一本化して収集するネットワーク。高精度なモーション制御を実現するのにかかせない信頼性の高いエンコーダの高速通信技術を活用したセンサーネットワーク。モーションデータとセンサーデータを同期して収集することが可能

・Σ-X サーボ単体のセンシング機能強化

これまでは、サーボの制御に関わるデータを直接フィードバックしていました。
Σ-Xは、サーボモータをセンサーとして活用することで、サーボの使用部品および設置環境のセンシングが可能となりました。センシングした結果をモニタリングすることにより動作状況をより深く分析できるようになりました。製品の主要部品の寿命やメンテナンス予測についてもモニタリングでき、メンテナンス時期の的確な判断と故障の防止に役立てることができます。

・Σ-X+Σ-LINKⅡ 各種センサー情報も時間軸を合わせて収集解析

センサーネットワークのΣ-LINKⅡにより、エンコーダ信号線に各種センサーやI/O機器などの機械側に設置される機器の接続が可能となりました。
Σ-LINKⅡのセンサハブを活用することで、機構部に取り付けられることの多い各種センサーの情報をモータのエンコーダの情報と合わせサーボパックに収集できます。モーションデータとセンサーデータの時間軸のあったデータを収集することで、データ処理の工数を削減するとともに、装置の変化をとらえることで異常検知ができます。

■センシングデータの活用例

Σ-Xは異常検知機能により、装置の変化で異常を検知することができます。

<異常検知>
Σ-Xは、事前にサーボパックに保存した正常時の運転データを稼働時の運転データと比較して異常判定を行う異常検知機能を搭載しています。これにより機械や装置の劣化、故障を検知することができます。この機能はまず正常状態の装置で複数のトレースデータを取得し、基準となる標本データを作成します。同じ動作パターンで運転させ、標本データと異なると、マハラノビス距離がしきい値(判定レベル)を超え、異常点数としてカウントされます。装置の“いつもと違う”をサーボでみつけることができます。

  • センシングデータの活用例

特長2 業界最高のモーション性能

■基本性能の向上

従来機種と比較し、Σ-Xの基本性能が向上しました。サーボドライブの重要な評価指標である速度応答周波数は3.5kHz(世界最高レベル)を達成し、指令に対する追従性が上がり、装置が安定的に稼働し生産性が向上します。また、サーボモータの最高回転速度が7000min-1となり装置の駆動速度が向上し、タクトタイムの短縮、生産性が向上します。加えて、分解能が業界最高レベルとなる26ビット(6700万パルス/回転)となるエンコーダを搭載し、停止精度が向上し更に滑らかな動きを実現します。
基本性能が向上し制御機能が安定したΣ-Xに置き換えることで、装置性能や生産効率が向上し付加価値が上がります。開発工程や生産性コストの削減も可能です。

<基本性能比較>

  • 基本性能比較

■サーボ調整時間短縮

サーボ調整時には適切な機械の特性を把握することに手間がかかるため、常に最適な慣性モーメント値を設定することができず、サーボの応答性を一定にすることが難しいという課題がありました。
Σ-Xでは、調整機能を進化させました。許容慣性モーメント比を拡大(30倍から100倍)し、“安定調整”がパワーアップしました。また、当社独自の負荷変動補償制御機能※2の搭載により整定時間のバラツキを低減し、サーボ調整時間を大幅に削減しました。

※2 負荷変動補償制御機能 とは
モータが駆動している機構の慣性モーメント値が動作中に変動する場合、サーボ内部でその変動分を補償し、応答を安定させる機能

  • サーボ調整時間短縮

Σ-Xは時間軸のそろった質の高い各種データの活用と高精度なモーション技術により、お客さまの装置や機械の視える化や生産性の向上を実現します。

今後の生産現場のものづくりについて

生産現場で起こる変化に対応しながら効率的な生産、高品質で安定した生産が行われる止まらない工場への変革が必要だと当社は考えています。この第一ステップとしてデータ収集・可視化・分析ができるΣ-Xシリーズを製品化しました。引き続き、お客さまの課題解決に寄与するとともに、更なる技術の向上を目指してまいります。

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